西村研究室HP

科戸の風2021

解析結果

各施設の解析結果については、各々以下の項目で示しています。
解析結果はFullHDで録画されています。

1.フィットネスジム A

解析対象空間
ジムの玄関近くから撮影。システム天井に角型のアネモスタットが装着されている。右奥部天井は折り上げ天井となっている。

解析対象のモデル化
各種のトレーニングマシーンは除外しているが、パーティション等の什器備品類は再現している。

空気齢
全体に空気齢はかなり低い。新鮮な空気が十分に行き渡り、良好な環境が維持されている事が分かる。 吹き出し口直下が目立つが、新鮮空気は室全体に十分拡散している。

空気余命
空気齢同様、十分に低い値を取っている事がわかる。たとえ汚染物質が発生しても短時間で排出される事が示されている。 この室には天井にスリット型の吸込口があるが、そこへの吸引状況もよく示されている。

粒子の飛散
画像が少々乱れている点は失礼。この動画では分かりずらい点もあるが、飛散した粒子の大半は垂直に上昇し、ほどなく吸込口に吸い込まれている様子が分かる。汚染物質の飛距離は2〜3m 程度と思われ、ソーシャルディスタンスを確保していれば、汚染に暴露される可能性は低いと判断される。

二酸化炭素濃度の分布
こちらも少々画像が乱れている。発生源(人間)の周辺では高いが、最大でも800mmp程度と十分に低く、換気状態が良好な事が示されている。また吹き出し口からの 新鮮な気流の様子が見て取れる。

夏季における気温の分布
吹出口から出た気流がほぼ真下に向けて放出されている。床面近くまで達した後、 徐々に室内全体を冷やし始めている様子が見て取れる。 なお、途中で吹出流れが放出と停止を繰り返しているのは、サーモスタットによる空調の入り切りを再現しているためである。

冬季における気温の分布
夏季と異なり、吹出口からの気流は床面に達することなく、徐々に温度成層を形成していく様子が分かる。 なお、吸込口からしばしば冷気が逆流しているのは、理由の委細は省略するがこの建物の空調システムが改修を重ねた結果に 基づくものである。

2.理髪店L

解析対象空間
小規模な理髪店として、一般的なレイアウトである。奥に斜めの壁があり、什器備品類が多数ある。

解析対象のモデル化
什器備品類が解析結果に大きく影響すると思われたので、全て忠実に再現している。

解析対象空間
窓には換気用の小窓がついている。親子式の窓は、小規模な部屋で第3種換気を行う際には良く使用される手段である。

解析対象のモデル化
この小窓から空気が流入するので、当然忠実に再現している。

小窓を閉めた状態での粒子拡散
飛散直後から室内に広く拡散するが、それらの粒子は室内にしばらく飛散し続ける様子が分かる。

小窓を開けた状態での粒子拡散
小窓からの気流に直接敵に乗る訳では無いが、室内の換気状況が改善された事に比例して、飛散している時間が極めて短くなっている。

小窓を閉めた状態での空気齢
室全体として換気状態が悪い訳では無いが、空気齢はまんべんなく広がる。

小窓を開けた状態での空気齢
室内の換気状況は更に改善され、特に小窓から流入してくる新鮮空気の状況が良く示されている。

小窓を閉めた状態での二酸化炭素濃度
徐々に二酸化炭素濃度が高くなっていく様子が分かる。但し60分間経過後でもさほど高い訳では無い。

小窓を開けた状態での二酸化炭素濃度
窓が閉まった状態に比べ、常に外気が取り入れられているために二酸化炭素濃度は極めて低く維持されている。

小窓を閉めた状態での冬季の気温
空調立ち上がり30分間の計算。若干の温度成層が見られるが、天井が低い事もあり、十分に暖房は効いている。

小窓を開けた状態での冬季の気温
同様に30分間の計算。常に外気が流入するため、上下の温度差が大きくなる。二酸化炭素濃度の点から 小窓は開けた方が良いのであるが、寒さ対策が必要であろう。

3.飲食店G

解析対象空間
建物の形状は不定形な5角形。壁面が斜めになっている。

解析対象のモデル化
複雑な形状の平面計画のみならず、什器備品類も全て忠実に再現している。

解析対象空間
一部の天井はヴォールト状になっており、平面形状だけでなく、天井の形もかなり複雑である。

解析対象空間
ヴォールト状の天等も、全て現実に即する形で再現した。

ドアを閉めた状態での流線
かなり複雑な流れ場となるが、壁の換気扇が機能している事は示されている。

ドアを開けた状態での流線
流線が複雑な形状となる事は変わりは無いが、ドアからの気流が大きい事も分かる。

ドアを閉めた状態での粒子の拡散
複雑な流れに伴って室全体に粒子は拡散していく。ゆっくりとファンより排気されるが、 その速度はかなり遅い。

ドアを開けた状態での粒子の拡散
粒子の拡散状況は、ドアの開閉に関わらず室内での滞留が多く、ゆっくりとファンから排出 される。

以下は、夏季と冬季でのCO2濃度、およびPMV値に関する室内環境の比較である。

夏季におけるCO2濃度分布
初期値が400ppmから始まるが、15分で1300ppm程度まで上がり、あまり換気状況は良くない。 暖炉は点火されていない訳だが、ここからの外気の流入が見られる。ピザ窯内の濃度は当然高い。

冬季におけるCO2濃度
人間からの発生量が同一条件にも関わらず、全体に換気状況が良い。詳細に見ると、 ピザ窯へかなりの空気が流れ込んでいる。但し暖炉からは若干の逆流が見られる。

ここまで示された状況、および本物件の立地条件がかなりの寒冷地である事などを鑑み、 以下では換気扇(排気ファン)を増設する事により、計画的に換気量を増加させた場合の CO2濃度や温熱環境についての考察を行った。

換気扇を増設した場合の気流の流れ
ドア側から増設した換気扇に向かう”主流”が発生し、室内をクリーンアップする 効果が期待できる。

換気扇を増設した場合の粒子の拡散
発生初期段階では拡散が見られるが、その後短時間に換気扇より排出される様子が見て取れる。

換気扇を増設した場合のCO2濃度(1)
徐々に二酸化炭素濃度は60分間経過後でもさほ1000ppm以下で、室内環境の改善の 効果が著しい。

換気扇を増設した場合のCO2濃度(2)
別角度からの動画である。ピザ窯や暖炉周辺での事象は基本的には変わっていないが、 室内全体での改善は明確である。

但し、熱交換機を採用している訳では無いので、外気の影響が懸念される。 温熱状況の悪化度合いを観察してみる。

換気扇を増設した場合の夏季の温熱環境
空調立ち上がり15分間の計算。十分に涼しい環境が確保されている事が分かる。

換気扇を増設した場合の冬季の温熱環境
夏季とは異なり、15分経過後でもやや寒い環境となっている。空気環境とのトレードオフが 悩ましいところであろう。

4.喫茶店Y

解析対象空間(1)
全景。かなり小規模な店舗で、またガラスが多い空間でもある。天井は直天。

解析対象のモデル化(1)
小規模な空間であるため、H鋼の梁など小さな構造物まで再現している。

解析対象空間(2)
ドアもガラスである。この写真ではドアは開放されている。

解析対象のモデル化(2)
ここに示す画像ではドアは閉まっているが、実際に計算する際にはドアの開口まで表現している。

解析対象空間(3)
奥に見えるのがレンジフード。厨房内はかなり狭い

解析対象のモデル化(3)
レンジフード近傍や、それに接する天井面は気流場に影響が大きい事が想定される。

気流(ドアが閉まっている場合)
室内で大きな旋回流が見られる。全体にかなり複雑な気流性情が見られる。

気流(ドアが30°開いている場合)
旋回流そのものは消えないが、ドアから出ていく気流が大きく、また全体に若干の主流が見られる。

粒子の拡散(ドアが閉まっている場合)
旋回流に乗るような形で、室内に漂い続ける様子が伺える。

粒子の拡散(ドアが30°開いている場合)
大きく回る旋回流に乗る形で拡散するが、時間の経過とともにかなりの比率の粒子が ドアから排出される。

冬季のCO2濃度の変化(ドアが閉まっている場合)
ドアが閉まった状態でのCO2濃度の変化である。時間の経過とともにCO2濃度は上昇するが、 さほど問題になる様なレベルでは無い。

冬季のCO2濃度の変化(ドアが30°開いている場合)
ドアを30度開けると、計算時間15分の間ではCO2濃度はほとんど上がらない様子が確認出来る。

冬季のPMVの変化(ドアが閉まっている場合)
ドアが閉まった状態では、空調起動から15分経過後には店舗の内部としては十分な程度の温熱環境が得られている。

冬季のPMVのの変化(ドアが30°開いている場合)
ドアを30度開いた状態でもかなり寒い状況が確認される。

冬季の温度の変化(ドアが閉まっている場合)
ドアが閉まった状態では、客席はそれなりに暖かいが、厨房内の足元はかなり寒い状況である。

冬季の温度の変化(ドアが30°開いている場合)
ドアを30度開くと、厨房内の足元はもちろんの事、客席までかなり寒い状態となる。。