西村研究室HP

神戸商工会議所「KCCI神戸換気シミュレーションプロジェクト」

解析結果

各施設の解析結果については、各々以下の項目で示しています。 新型コロナウイルスが、空気中でどの程度の時間生存しているのかという問題については、専門家の間でも議論が分かれるところです。ここでは、単純に時間(秒)によって示しています。15分(=900秒)を一つの目安とし、それ以上となる場所については赤色で表示させています。また粒子の拡散については、経過時間が30分(=1800秒)になるまでの解析を行っています。
今後、ウィルスの専門家によって結論が出た際には、ここで示す空気齢や空気余命によって、対象とする空間がどの程度安全かが判断される事を期待しています。

「密閉」を避けるための、簡単かつ確実な手段として「窓開け」があります。全ての建物の窓が開くわけでは無いですが、ここでは窓を開けた状態でのシミュレーションも行っています。その時の条件としては、
・開放可能な窓は全て開ける。
・排煙窓についても開けた状態とする。
・ドアも開ける。
・外部の風は、対象建物の場所での卓越風とする。
としています。

いわゆる「エアコン」に吸い込まれたウィルスが、エアコンを透過して再飛散するかどうか、という点についても議論があるかと思います。通常エアコンに装着されている樹脂フィルターは本体の汚損防止のためのものであり、空気清浄効果は無いとされていますが、ここではウィルスは捕集される、としております。エアロゾル学的に見れば、熱交換器の細いフィンの中を強い乱流状態で空気が通過する事になり、フィン表面でかなりの確率で沈着するのでは、という考えです。ご異論もあろうかと思いますが、ここではそのような条件の下での解析としております。

粒子拡散の画像において、動かなくなっているものが多数見受けられます。これは壁面・床面などに付着したものです。ここで対象としている「空気感染」・「エアロゾル感染」には関係無くなる訳ですが、ここでは解析空間中にあるものとして、そのまま残して表示してあります。「どの程度の粒子が壁面・床面に付着するのかな?」という掃除の目安として考えて頂ければ幸いです。

解析結果の内、空気齢等はFullHDで録画されています。

1.神戸商工会議所 神商ホール

解析対象空間
ホール後ろ側から正面を撮影。基本的に平場のホールで、椅子や演壇も可動式である。

解析対象のモデル化
椅子や机は可動式なので解析対象から外している。またシャンデリア風照明は、その構成部材が極めて細いのでこれらも解析から外している。

気流
このホールは天井のブリーズラインから吹出・排気の両方を行っている。その気流に従ってホールの中ではかなり複雑な縦方向の旋回流が発生している。正面奥の吸込口からかなりの量の空気が吸い込まれている様相がよく分かる。

粒子拡散
縦方向の旋回流に巻き込まれる形で粒子が移流・拡散している。床や壁に沈着する粒子も多い。

空気齢
全体的に、比較的長時間との結果となっている。天井のブリーズラインは吹出・吸込の両方で使用しているため、天井近辺では空気齢が短い場所と長い場所が極端に分かれる。

空気余命
空気齢同様、全体に長時間との結果となっている。正面壁吸込口および天井吸込口付近はかなり短時間になっていることが特徴。

2.神戸商工会議所 特別会議室A

解析対象空間
一般的な形状の小規模な会議室である。椅子・机は可動式である。窓は片面のみで殆ど開閉出来ない。

解析対象のモデル化
机・椅子は解析から外している。天井照明の枠部分に吹出口・吸込口の両方がある。

気流
いくつかの旋回流が見られる。FUCからの気流の影響が非常に大きい。

粒子拡散
FCUの影響が大きく、多くの粒子が一気に吸い寄せられるが、吸い込まれなかったものについては、FCUの吹出気流により室内広くに拡散している。但し床面に付着するものも多い。

空気齢
室内は静かで気流感も無かった。空気齢はかなり短いが、先述の通りFCUが上手く再現されていないが、この影響が強く、全般的にデータとしての信頼性は欠く。あくまで参考程度の扱いとされたい。

空気余命
空気齢同様、比較的長い時間となっている。FCUの影響が大きく出てしまっているので、参考扱いとされたい。。

3.有馬山叢 御所別墅

解析対象空間
エントランスロビー側。小屋組が見える。写真では見えないが、廊下を挟んで右手前側がダイニングとなっている。

解析対象のモデル化
設計図が入手出来なかったため、写真等から判断して作成。梁の位置が若干異なっているが、この程度の細い梁であれば結果に及ぼす影響は小さいと判断した。

気流(窓・ドアが閉まっている場合)
ロビーでは大きな旋回流が見られるが、その他の場所では複数の旋回流が発生している。奥側ダイニング外壁側から外へ出ている流れは厨房の換気扇も解析対象としたため。

気流(窓・ドアが開いている場合)
建物の規模に較べて窓面積が大きいため、かなり激しく外部からの気流の影響を受けている。窓開けの効果は極めて大きい。

粒子の拡散(窓・ドアが閉まっている場合)
ロビー部では明確な旋回流があるため、初期段階では巻き込まれた粒子があまり拡散せずに移流していく。その後拡散し、かなり長時間に渡って粒子が飛散しているが、次第に空調機に吸引されていく様子が分かる。

粒子の拡散(窓・ドアが開いている場合)
窓が閉まっている場合と対照的に、瞬時に部屋の外へ移流・拡散されていく。結果的に床面や壁面に付着する粒子も殆ど見られず、かなり良好な状態と判断する。

空気齢(窓・ドアが閉まっている場合)
ほぼ閉鎖されている空間にも関わらず、空気齢はかなり短い。室全域に渡って空調機が十分に効果を発揮していると思われる。

空気齢(窓・ドアが開いている場合)
この動画においてはカラーバーが180秒(=3分)で作成されている。それでも大半の領域で空気齢はかなり短い事が分かる。

空気余命(窓・ドアが閉まっている場合)
空気齢同様、室全体で空気余命も極めて短い。全室、排気性は極めて良い。若干の濃淡も見られるが、問題になるレベルでは全く無い。

空気余命(窓・ドアが開いている場合)
この動画においてはカラーバーが180秒(=3分)で作成されている。窓を開けることにより、もともと良好であった排気性が更に改善される。

4.西播磨文化会館 講堂

解析対象空間
正面ステージ。会場自体は平場だが、音響設備等は完備している。椅子は可動式である。

解析対象のモデル化
音響反射板等も含めて再現しているが、緞帳や椅子等の可動式のものは解析対象には含めないこととしている。

気流(窓・ドアが閉まっている場合)
室全体に大きな旋回流が複数個発生している。ステージ上にはこれと独立した気流が発生していることが分かる。

気流(窓・ドアが開いている場合)
中央部に極めて強い旋回流が発生している。排煙窓やドアなどの各所で強い気流が侵入、排出されている。

粒子の拡散(窓・ドアが閉まっている場合)
比較的遅い流れの中で、エアコンに吸い込まれる粒子も見られる。ステージ側へ移流拡散していくものも多い。一方で旋回流に乗った粒子は、かなり長時間に渡って空間中を漂っている様子もうかがえる。

粒子の拡散(窓・ドアが開いている場合)
発生した粒子の大半はすぐに屋外へ排出される。室内に残ったものも、大半が程なく排出されていく様子が分かる。

空気齢(窓・ドアが閉まっている場合)
全体にあまり良好では無いが、ステージについては直上に設けられた給気口からの影響を強く受け、良好な状態が維持されている。

空気齢(窓・ドアが開いている場合)
窓・ドアの開放による効果は絶大で、全ての空間において十分に良好な結果となっている。

空気余命(窓・ドアが閉まっている場合)
空気齢同様、全体にかなり悪い。15分を切っているのは吸込口近辺のごく一部に留まり、ステージ上でもかなり排気特性は劣る。

空気余命(窓・ドアが開いている場合)
こちらも空気齢同様、窓を開ける事によって大幅に改善する。この傾向は空間全体に渡っている。この施設においては、窓開け換気が必要不可欠だと考える。

5.西播磨文化会館 体育館

解析対象空間

一般的な体育館。南面、北面はほぼ全面に窓があるが、開口出来る窓はその中の一部。

解析対象のモデル化

天井については、一部形状の簡略化を行っている。但し気流に影響しそうな窓廻り等はかなり詳細に再現している。

気流(窓が4面開いている場合)
窓を4面開けた場合でも、大きな外気の導入が見られる。但し一部では旋回流が発生している。

気流(窓が8面開いている場合)
大きな旋回流が2つ発生している。但し気流速度は相当速く、南面(画像下側)から速やかに排出されている。

粒子の拡散(窓が4面開いている場合)
下流側にある粒子は比較的早い時間で排出されるが、上流側の粒子は室内の旋回流に巻き込まれ、その後床に付着するものが多い。

粒子の拡散(窓が8面開いている場合)
8面の窓を開ける事によって、上流側の粒子も移流されるが、4面同様、旋回流に巻き込まれたものは最終的に床面に付着している。

空気齢(窓が4面開いている場合)
強い気流が吹いているため、全体に給気状態は良いのではと思われたが、実際には旋回流の生成に伴って同じ場所を廻っているだけの様である。

空気齢(窓が8面開いている場合)
気流だけを見ていると4面開きとあまり変わらなくも見えたが、こちらは十分に新鮮空気が入っている事が分かる。

空気余命(窓が4面開いている場合)
空気齢同様、気流速度の割には全体に空気余命は長い。旋回流の影響とみられる部分が多く、気流速度の割には排出性も意外に悪い。また同様の理由で、空気余命が短いところと長いところの差が顕著に表れる。 南面(手前側)の窓近辺以外は、排気までに結構な時間がかかっている。

空気余命(窓が8面開いている場合)
4面開きとは異なり、極めて短時間で排出されている。

6.西播磨文化会館 美術展示室

解析対象空間
本来自然換気で設計されているにも関わらず、現状では全てのまどが塞がれている。

解析対象のモデル化
天井面が変な形に見えるが、これは画角の取り方によるもので、実際には平坦になっている。

気流(窓が閉まっている場合)
PACからの気流により、小さな旋回流が複数個発生している箇所が見られるが、窓が開いていない、かつ給気口が無いため、ドアからの流出分を除けば同じ所をぐるぐる廻っているだけである。

気流(窓が開いている場合)
室全体に非常に早い流れが見られ、急速にドアの方へ流れ出していく。

粒子の拡散(窓が閉まっている場合)
ドア近辺で発生した粒子は短時間で流出している。また、奥で発生した粒子もドア近辺まで移流したものは比較的短時間で流出している。

粒子の拡散(窓が開いている場合)
どこの場所で発生した粒子も、極めて短い時間で排出されている。床や壁に付着するものも殆ど無いほどの勢いである。

空気齢(窓が閉まっている場合)
開放されているドア近辺では比較的短時間だが、その他の場所では殆ど新鮮空気が入ってこない事がわかる。

空気齢(窓が開いている場合)
窓を開放すると、逆に殆どの場所でごく短時間のうちに新鮮空気が流入している事がわかる。

空気余命(窓が閉まっている場合)
空気齢同様、ドア近辺以外は排気状態も極めて悪い。

空気余命(窓が開いている場合)
こちらも空気齢同様、窓を開放する事により、ごく短時間の内に室内の空気が排出されることが分かる。

7.上郡町生涯学習支援センター大ホール

解析対象空間
本格的なコンサートホール。残響板や舞台照明、PAシステム等まで完備している。また規模も決して小規模では無い。椅子は固定式。窓は無い。客席は階段状になっている。

解析対象のモデル化
固定式の椅子や残響板等も全てモデル化している。また画面では確認しにくいが、アネモ型吹出口も再現している。

気流(ドアが閉まっている場合)
舞台上での旋回流が見られるが、これらも舞台下の吸込口に入っていく。客席からも舞台下の吸込口への気流があるため、滞留部がほぼ見られない。

気流(ドアが開いている場合)
画面上から下または左へ強い気流が見られる。また舞台上の空気の動きも強くなっている。

粒子の拡散(ドアが閉まっている場合)
舞台上や客席前方で発生した粒子は舞台下の吸込口へ排気され、また客席後方での発生粒子も画面左上の排気口へと移流していく。但し画面下側の出入り口近辺では滞留箇所が見られる。

粒子の拡散(ドアが開いている場合)
画面上のドアから下のドアへ向かって一気に流れていく。但し客席へ付着する粒子も多い。

空気齢(ドアが閉まっている場合)
客席、舞台ともに殆ど問題が無いが、画像右上の排気口真下には局所的に空気例が長い部分もある。

空気齢(ドアが開いている場合)
客席・舞台上ともに極めて短い時間である。

空気余命(ドアが閉まっている場合)
客席・ステージ共に殆どの場所で短時間で排出されているが、画面右下の排気口から最も遠い部分では一部に排気が遅い部分もある。

空気余命(窓・ドアNI開いている場合)
客席・ステージ共に全ての場所で極めて短い時間で排気されている。


天井裏ってだいたいこんな感じです。